読書感想文──ようこそ量子 量子コンピュータはなぜ注目されているのか──

これは何

半月ほど前に読んだ本で、返却する前にまとめとくかという理由で書いた読書感想文です。

 

ようこそ量子とは

こちらです。2006年の本なので多少古い情報ではありますが、先端的な話ではなく基本的な原理を、厳密ではないにせよ分かり易く説明した本です。

数ある量子論の本の中で自分がこの本を選んだのは、たまたま図書館で目に入ったからで、前情報などは知らなかったのですが、大変読みやすかったです。

 

 

自分語り

自分はまだまだ初学者とは言え情報畑の人間です。ですので他学科の友人から情報系のよくわからない話を尋ねられるのですが、大抵の場合は知らないとしか返答できず、少し悔しい気持ちになります。

特に、量子コンピュータなどは、適当にネットで調べても納得できかつ自分が理解できるレベルのものがなく、その仕組みは完全なブラックボックスでした。

 

そんなこんなで、この状況はよくないなぁと思いながら別件で図書館へ行ったところ、たまたまこの本が目に入り、試しに借りて読んでみました。夏休みで暇だったというのもあります。

 

この本を読むまでは、量子コンピュータは重ね合わせの原理なる現象を用いており、それをうまく操作することで、例えばRSA暗号が一瞬で解けたりできる、といった程度の知識しかありませんでした。実際、適当にネットで調べてみると、このくらいのことしか書かれていないサイトが多いように思います。

ですが、この本を読み、大雑把ではあるものの量子の概要を知ることで、例えば現在のコンピュータの処理速度に限界が来るかもしれないことや、新たな暗号通信が期待できることなどが分かりました。

 

まあこの分野の研究とか実装とかするつもりは一切ないんですけど。

 

 

閑話休題

 以下、適当にこの本のことを書き下していきます。

 

感想(本としてどうか)

まず、全体的に分かり易く書かれていたのは確かです。言葉だけとらえると誤解しそうな部分に対してはそれを予測したうえで明確に否定していたり、非常識的な振る舞いをする量子に対し的確で明快な例を挙げていたりと、正しい道へひたすら誘導していたように思います。

それ故最終的に得られたものは知識というより感覚の方が近いものな気もしますが、それはこの本が悪いことを表しているのでなく、量子の振る舞いが如何に我々の常識と離れているか、そしてそれを理解させるのがどれほど難しいかを表しているように思えます。

 

ただ腑に落ちない点があるとすれば、終盤で説明されていた量子テレポーテーション辺りでしょうか。自分にはこの辺りの説明はよく分かりませんでした。もちろん自分の実力不相応というのもありますが、この辺りの説明は漠然とした雰囲気で、理解させるというよりかは納得させるといった感じが強いように思えました。

もちろんこの本の趣旨からすれば、量子の性質を応用することでこういったことが行える、という説明で十分なことは分かりますが、それにしてももう少し何とかならなかったのだろうかと思います。

 

 

感想(量子が面白い的な話)

量子について、自分は何か不思議なもの、波動と粒子の二重性がどうこう、トンネル効果なるものがある。それくらいの漠然とした、しかもほんの一部の知識しか持っていませんでした。

そもそも量子とは何なのか、それすらも知りませんでした。

 

実は量子というのはある限定的な物体でなく、「量子的性質」をもつ物の総称であり、概念として存在するものです。それは例えば電子であったり、光子であったり、素粒子であったりと様々です。多分。

 

そしてその量子的性質というものは、我々の一般的な感覚、古典物理学と大きく異なった振る舞いをするのです。

例えば、エネルギーなどの値を飛び飛びでしか取れなかったり、存在する場所は確率的に広がっていたり、観測するまで右回りでもあり左回りでもある状態を持っており、観測することによりその状態が確率的に決まったり、超えられないはずのエネルギーの壁を越えたり、、、とにかく様々な常識外れな、しかしそうでないと観測結果が説明できないような、突飛な性質のことです。

 

そしてこれらの性質がなぜ重要かというと、ミクロの世界、すなわち非常に小さな世界においてはこの量子的性質が大きく表れるからです。

そしてこのことから予想されるとして書かれているものが、パソコンのパーツの一つであるCPUの限界についてです。

CPUの性能が上がるにつれ、その内部のパーツは小さくなっていきます。小さくなるにつれ、そのパーツに流れる電子はミクロの世界を支配する量子的性質を持ちます。すると、例えばトンネル効果により電子が消えてしまったりします。多分。

つまり何が言いたいかというと、CPUの内部が量子的性質を帯びると、古典物理学の法則に基づいて設計された演算が上手くいかなくなるということです。

 

この辺りを自分はうまく正しく説明できる自信はありませんので、詳しく知りたい方はこの本をお読みください。

 

 

さてそんな厄介な性質を持つ量子がどう役に立たせるかということですが、大雑把に言うと量子の確率的な性質と、量子間での相互作用を上手く利用します。

これにより、素因数分解の難しさを土台としているRSA暗号を一瞬で解くことができるアルゴリズムを構築できたり、また原理的に盗聴ができない電子鍵の作成方法である、量子鍵配送も実現可能となります。すごい。

 

しかし、当然のことですが、それらを実現可能とすることはまだまだ難しそうです。

量子間での相互作用と一口に言うのは容易いですが、その相互作用を起こす量子の数を増やすことは極めて困難です。量子コンピュータほど巨大になると、その必要な量子ビットは10^6にもなるそうです。やばい。

 

ですが、当然この量子コンピュータ、ひいては量子力学の研究はこの本執筆当時より進んでいます。

量子コンピュータが実現した暁に、世界にどういった影響を与えるのか、恐ろしくも楽しみでもあります。

 

 

締め

ということで長々と書きましたが、以前の相対性理論の本の時よろしく具体的な数式は一切扱っていません。ですので具体的に問題を解くなどできません。知ったかするので精一杯です。

ですが、今まであやふやで間違った理解も多かったこの量子や量子コンピュータについて、少しでも確かな情報と理解が得られたことはよかったと思います。

 

この本では他にも幾つかの内容が、自分の雑な説明より詳しく丁寧に載っています。専門知識を必要としないとっつきやすい本ですし、少しでも興味があるなら読んでみてはどうでしょうか。